カステッロ・デイ・ランポッラ Castello Dei Rampolla

この農園を1964年に相続したのはアルチェオ･ディ･ランポッラさんです。
アルチェオさんは農業を学んだ後、南米で人造湖の建設などの農業開発に携わっていました。
若いころから、ワインを愛していた彼にとって、この相続は長年の夢が実現したものでした。


74年までの10年間はアンティノーリに全てのブドウを販売していましたが、
ここで第一線でワインの醸造を進める方々の意見を聞くことが出来、
以前から農業に携わっていたことで感じとっていた、畑の重要性に確信を持ちます。

75年から自社で瓶詰めを行い始め、高品質なキャンティを生産していました。
このキャンティに使っていたサンジョベーゼというブドウ品種に、別の可能性を感じたアルチェオさんは
フランス品種のカベルネソーヴィニョンとのブレンドを始めます。

彼の信じた可能性は見事に開花し、このサンマルコというワインがアルチェオの名前を有名なものにしました。


この成功で、これまでのワイン造りに自信を持ったアルチェオさんは80年代の終わりにとてつもない試みを行います。

サンマルコに使われているカベルネソーヴィニョンは世界中で栽培され、
デイリーワインから世界でトップクラスの品質のものまで、造り方で様々な顔を表します。

そしてこのブドウはその凝縮された味わいが一番の特徴です。
多くの造り手はその凝縮感を得るために様々な努力を重ねています。

• 房の数を減らす
• 樹を小さく仕立てる
• 樹を植える間隔を狭める　など

その中でもアルチェオさんの試みは群を抜きます。

項目	アルチェオさん	優良な造り手の平均
植樹率	8,000〜10,000本/ha	4,000〜5,000本/ha
一本の樹からの収穫量	300〜350g	陰干しブドウからワインを造るときとほとんど同じ
樹の高さ	50cmに徹底	80cm

※樹の仕立て方は特集で扱います。


高い密度(狭い間隔)で樹を植えるには、良質の土を作らなければなりません。

ブドウの量を絞るには、一本いっぽんの樹から良質な芽を見極め、繊細な手入れを続けなければなりません。

樹が低く、高密度で植えられているのであれば、機械を導入することが出来ないために全てが手作業になります。

アルチェオさんは大変な努力を重ね、大切に、大切にブドウを育てていきました。


そして初めてワインに仕上がった96年。

とても丁寧に育てられてきたブドウから、とんでもない凝縮感と、滑らかさ、
華やかで深みのある香りが引き出され、世界中でこのワインが賞賛されます。


しかし、賞賛をあびるアルチェオさんの姿は見ることができません。

彼は、大きな愛情を込めて育てた畑から、ワインが仕上がることを見ることなく亡くなられました。
アルチェオさんの意思を継ぎ、大変な努力を続けるのは、息子のルチオさんと、
アルチェオさんと共に畑を育ててきたエノロゴのジャコモ・タキスさんです。


畑にアルチェオさんと同様の愛情を持ち、アルチェオさんを畏敬する2人の努力によって世界で最高水準のワインが造られました。
そしてこのワインには、アルチェオのブドウ畑「ヴィニャ･ダルチェオ」という名前がつけられました。

「感動を生むワインとは、人の信念と努力から造られるもの。」
改めて、そう感じさせてくれる造り手です。